平和安全法制・集団的自衛権について

市民からも不安の声が上がっていた集団的自衛権の問題ですが、私は常々以下のように説明して参りました。つまり、価値観を同一にする西側諸国が互いに守り合う「相互防衛システム」の構築こそが合理的で有効な安全保障であり、単独で自国を守ろうすれば否応なしに軍事大国化せざるを得ず、核武装の可能性すら否定できません。

現在のように金だけ出して一方的に守ってもらえればこれほど都合の良い話はありませんが、すでにそのような片務的な関係は国際社会が許容しなくなっているのです。現に、米国をはじめ、EU諸国、東南アジア諸国、南アメリカ諸国など、ほぼすべての主要国が日本の平和安全法制を積極的に支持・歓迎しています。

この点、自衛隊が歯止めなく活動を広げ、米国と共に世界中で戦争をするなどの心配の声もありますが、このような批判は当たりません。平和安全法制による集団的自衛権は、自衛措置に限る厳格な歯止めと国会の承認が必要な「(いわば部分的)集団的自衛権」なのです。

なお、「北朝鮮や中国の軍事的な脅威はなく、日本の集団的自衛権は新たな(日本による)侵略の可能性を高める準備行為である。それゆえ、平和安全法制は戦争法案である。」などといった荒唐無稽な話は論外です。

このような論調のベースとなっているのは「反戦平和主義」(軍事的抑止力を否定する平和主義)ですが、この点については、また改めて第一次世界大戦後のヨーロッパの思想状況、第二次世界大戦後の日本の思想状況、マルクス・レーニン主義、ユートピアリズムとリアリズムなどの説明とともに、その虚構性を指摘したいと思います。

 

ちなみに、民主党の主要議員も政権の座を降りるまでは、集団的自衛権の必要性を認めて推進していました。「今の憲法は、すべての集団的自衛権の行使を認めていないとは言い切っておらず、集団的自衛権の中身を具体的に考えることで十分整合性を持って説明できる」(岡田克也代表・議員HP・読売新聞)

「国際法規に基づき我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を守るために行動する他国と共同して、自衛権を行使することができる」(枝野幸男幹事長・憲法9条私ならこう変える)

「平和な日本を守り続けるため、集団的自衛権行使の容認が必要なのである」(前原誠司元代表・議員HP)、「いざというときには集団的自衛権の行使に相当することもやらざるを得ないことは、現実的に起こりうる。ですから、原則としては、やはり認めるべきだと思います」(野田佳彦前総理・著書)。

また最近でも細野豪志政策調査会長は「一緒に行動している米軍が攻撃を受けた場合、日本として当然やるべきことはやる。米国にミサイル攻撃がなされた場合に日本のミサイル防衛システムで撃ち落とすことも理屈として必要だ」と発言しています(2013年5月13日・産経新聞)。

 

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写真は以前もご紹介した中国の軍事費の増大状況です。海洋資源の確保や太平洋における軍事プレゼンスの拡大を狙う中国を相手に、日本が単独で自国を防衛することはすでに不可能です。部分的集団的自衛権による西側諸国との相互防衛システムの構築により、貿易立国日本の生命線「シーレーン」の安全を確保し、尖閣諸島や沖縄への軍事侵略を絶対に許さないという毅然とした態度を示す必要があります。

ちなみに、現在の自衛隊は補給が制限されているため継戦能力が極めて低く、局地的、一時的な侵攻は防げたとしても、数週間にわたる本格的な侵攻を食い止めることはできません。また隊員数も非常に少なく、軍人一人で国民何人を守っているのかというデータでは、北朝鮮は軍人1人で国民21名、中国は28名、スイスは37名、韓国は73名、ドイツは92名、米国は125名、台湾は128名、ロシアは147名に対して、日本は512名となっています。

日本は単独では脆弱な防衛能力しか持っていないのです(ましてや他国侵攻能力などあるはずもありません)。これが平和安全法制による(いわば部分的)集団的自衛権を必要とする理由です。