地方分権と憲法改正

東京一極集中の弊害に対して政府は「地方創生」を打ち出しているが、従来の公共事業、企業誘致型の振興策の破綻は明らかだ。災害時等の首都機能分散の必要性も含めて考えると、解決には統治機構改革と併せた抜本的な対策が必要である。具体的には「道州制」や「副首都制」を実現することで地方分権を確実にし、ヒト・モノ・カネを地方に回帰させる必要がある。国と道州、各基礎自治体の役割を明確にし、国の機能強化(国の自立)と地方分権(地方の自立)の両立を目指すべきだ。

日本を弱体化させるための縛りである「戦後レジーム」からの脱却のために、憲法改正が必要である。憲法改正の大目標はあくまで「戦後レジーム」からの脱却だ。その意味で9条改正(自衛隊明記)は憲法改正の核心であり、「自立する国家」実現への第一歩である。

その他、時代と共に認識されるようになった「新しい人権」が憲法に規定されていない。それらが憲法解釈によって認められている現状が続けば、結果的に「硬性憲法」が骨抜きになってしまう。

また、戦後78年を経て法律や行政処分が憲法違反と認められた例は20数件しかない。違憲審査権により理論上は憲法が法律全体を統制するはずが、実際は十分機能していないのである。理由の一つは付随的審査制を採用していることにあるが、「憲法裁判所」の設置により訴訟に付随しなくても抽象的に違憲審査権を発動することで、最高法規である憲法の精神を下位の法律に行き渡らせることができる。道州制が実現した暁にはこの機能がより重要になってくると考える。

皇位継承

日本国は皇統という幹(みなか)に貫かれ、武家や神門仏門(現在では武士道精神や道徳)を枝とし、国民を葉とする大木(国体)であり、そこに日本文化という実がたわわに生っている国柄です。その国柄を守り、我が国の美しい国土、伝統と文化を千年後、万年後にも残したい。「男系皇統の維持」に黒雲がかかっている今日、問題の解決と男系維持の死守は保守政治家の務めです。具体的には、皇室典範を改正して現在皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する旧宮家の男系男子が養子として皇籍復帰できるようにすべきす(弊著「皇位継承~論点整理と提言」参照)。

雲

9月20日 AI後の社会保障

未来にはシンギュラリティによりAIが人間の能力を超えると言われたが、それはすでに現実のことになってしまった。今後、労働力だけでなく知的作業においても急速にAIロボットが人間にとって代わる。そのときに「働かざる者食うべからず」と言っていられるだろうか?

社会保障が立ちいかなくなる将来の代替策として、今の間に真剣に「ベーシックインカム」を研究しておくべきだ。完全なものでなくとも、仮に毎月3万円を全国民に配布するだけで、パート世帯の生活は助かり、中間層の消費は促進される。5人で暮らせば毎月計15万円支給されるとなれば、結婚と出産が促され有効な少子化対策となる。

供給サイドへの利権的財政投下や既存の複雑な社会保障を減らしていけば、行政が可及的にミニマム化・スリム化し、行財政の構造改革が進む。

需要サイドへの直接の財政投下は、需要を喚起して健全な経済成長を促す効果もある。

未だ実験的な提案なので段階を踏み、まずはジョブ・ギャランティ・プログラム(外国人労働者・移民政策の転換にも繋がる。※2070年外国人割合は10.8%と厚労省が予想)を導入、次いで少額ベーシックインカムとの併用、人間の職がAIにほとんど奪われた未来には完全なベーシックインカムとする等、積極的な議論を進めたい。

9月15日 失われた30年の責任と日本再生

下記、私の意見は一見短略的かつ単純に思われるかもしれないが、こと経済に関しては「単純な原理原則」にしっかり立脚して政策を考える必要があるように思う。原理原則に軸足をおかず迷走し続けている「失われた30年」を作り出した者の責任は重い。

経済理論は、原則に立ち返れば「需要と供給のバランス」に帰する。今は経済規模が拡大しない中で外的要因により特定の物価だけが上がるという「悪しきインフレ」に陥っているが、基本的には日本のデフレ基調は続いている。それは消費者の賃金が上がらず、お金を使えない故に需要が伸びないからである。需要が少ない故にデフレ基調なのだから、必要な政府対応は需要を直撃する「消費者への再配分」や「消費減税」であり、それこそが最も有効な財政政策である。

トリクルダウンを狙って供給側の企業に資本を投下しても、需要がなければ企業は生産を拡大させず内部留保にまわす。今の「賃金を上げろ」という議論も消費者の需要を喚起したいからなのであって、「消費者への再配分」や「消費減税」と狙う効果は同じなのである。「需要サイドの重点化」こそ日本経済復活への第一歩である。

振り返ると、自民党一党支配は財界や官僚と癒着して供給サイドへの利権的な財政投下に汲々としてきた。唯一、安倍政権はアベノミクスに取り組んだが、①「金融緩和」は徹底したものの、需給バランスを転換できるほどの②「財政出動」には至らず、財政の投下対象も供給サイドに偏ったものであった。③第三の矢も不徹底に終わり、大規模な有効需要の創出、規制緩和による成長産業と雇用の創出には至らなかった。

そこで安倍政権が次に打ち出した「一億総活躍社会の実現」における「働き方改革」では労働関連法の改正等が順次行われた。コロナ禍テレワークの普及等で一定成果も出たが、未だ正規非正規の格差は埋まらず、長時間労働も低賃金も解決していない。

この社会の閉塞感を打破するには、日本固有の正規非正規区分を廃止し、その上で雇用の柔軟性と流動性そして安定性を確保するような大胆で抜本的な構造改革を進めるべきである。一度躓いた者でも再チャレンジができる柔軟な社会の実現が求められる。

急激な人口減少が経済にもたらす影響は甚大であり、「少子化対策」も重要な成長戦略の一つである。政府与党は幼児教育・保育の無償化等を進めたが、出生率1.8の実現には程遠い。現政権の異次元の少子化対策も肝心の結婚支援と高等教育支援が薄く、効果は限定的である。

岸田政権では一億総活躍の4つの推進室が廃止され、明確な総括もしていない。現政権が捨て去ったように思えるアベノミクス(金融緩和・財政出動・構造改革)の完成と一億総活躍社会の実現は未だに日本再生に有効な基本戦略のはずである。

「財源」については、財政法4条を改正して財政出動の自由度を上げ、インフレ傾向が「基準」を超えない間は赤字国債で賄う。この「基準」がPB(プライマリー・バランス)に変わる新しい財政規律となる。経済の健全な拡大が実現すると税収も上がり、インフレによって債務も目減りしていくため財政破綻は生じない。いくら債務が多くても上記「基準」を超えず、また経済が健全に拡大している間は、他国や金融機関の日本財政への評価は下がらない。また、戦後のハイパーインフレは生産施設が破壊され供給ゼロの状態にもかかわらず、国民の需要が高まるため起こるものであり、現在には当てはまらない。

念のため、財政の自由度を奪い日本を弱体化させる「財政法4条」の改正は戦後レジーム脱却のために必要不可欠である。強力な自国通貨を持つ日本は本来財政の自由度が高い数少ない国家の一つである。にもかかわらずPB黒字化の縛りがあるため30年に及ぶデフレ基調から脱出できない愚かしさに気付くべきである。これもまた「経済的に自立する国家」実現への道程である。

藤井聡先生と

積極財政の両雄、京大大学院教授の藤井聡先生、元国交省の大石久和先生と。