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【八幡和郎氏(作家)による書評(言論プラットフォーム・アゴラ)】

『皇位継承 論点整理と提言』(女性議員飛躍の会編)という新刊が展転社から刊行された。「女性議員飛躍の会」は稲田朋美議員(自民党幹事長代行)などが、女性の政治促進や女性ならでは政策提言をしていこうとして、このところ注目度が増している政治集団である。自民党の政策には保守主義というより、単に男目線だからえそうなるだけだけだろうというものも多いので、いいことだと思う。

その「女性議員飛躍の会」では、皇位継承についての連続勉強会を開いてきたが、その議事録を、稲田代議士の政策秘書で元宝塚市議の大河内茂太氏がまとめて単行本として刊行されたわけだ。

皇位継承のような微妙な点が多い問題では、書いたものでは言葉が選ばれすぎているので分かりにくいことも多い。そういう意味では、きちんんとした編集者がいると、かえって講演録のほうが分かりやすいことも多い。とくに、女性議員たちによる鋭い質問への回答もついているし、さらに、大河内氏自身によるまとめの論文もついているのでなおさらだ。

登場するのは私自身のほか、高森明勅、櫻井よしこ、所功、百地章、松浦光修である。それぞれの立場を強引にひとことで総括すれば、高森氏は女系派というよりは悠仁様を廃嫡して愛子様を天皇にという急先鋒、櫻井さんは女系への移行は革命であり悠仁様を廃嫡することまで国民は望んでないとし、所氏は女系も可能だが男系が望ましくつなぎとしての女帝はいいのでは、百地氏は憲法学者として世襲とは男系継承のことであると断言され、皇室祭祀との関係から男系男子を原則とすべきとおっしゃる。

私は女系も論理的にはありえなくもないが、男系男子の継承が可能なのに女帝や女系にするのは正統性を傷つけるし、女帝の配偶者の扱いが難しいなどの理由で男系男子の可能性を維持するべく努力することが先決である。ただし、女系も潜在的な候補者として手当をするのは反対でない。

そうした、各人の微妙な立場の違いが、本書ではくっきりと明らかになっている。また、大河内氏の論考では、政治思想としての保守思想において男系男子で伝統にしたがって皇室を維持するべきだという考え方が政治学論文としてたいへん見事に書かれている。ここに出てこない識者からのヒアリングも豊富に入っている。

そのなかで、「伝統と創造」に保守主義の原点をもとめ、そこから、男系男子による皇位継承は国体そのものといった話になって、保守勢力ではなかなか説得力があると思うが、男系男子継承には、保守系でない人にも賛成してもらわないとダメなわけである。

だから、私などは没政治思想で、国家の安定という観点からリアリズムで攻めていくし、必要ならとりあえずは悠仁様以降の継承については、女系の可能性も残してもいいと思うのである(いまのままでは、男系派と女系派の対立で継承候補者が減っていくばかりなのである。)

そして、そういう問題の膠着状況を打ち破るためには、自民党の内部での女性議員の活躍など存外、マンネリ化した議論に穴を開け得るのでないかと期待したいのである。