性的マイノリティ理解の壁 ~ 基礎知識の欠如

当事者、専門家、市民の皆様や行政・政治関係者などの声を拾いながら、性的マイノリティ支援に関する一般質問を準備したり、勉強会を企画したりする中で、性的マイノリティに関する基礎的な知識が、私だけでなく、市民・国民にも十分周知されていないことを感じました。

私は再々申し上げているように、議論が深まっていない現時点での同性婚立法や類似法制の推進は時期尚早という考えですが、現に辛い思いをされているLGBT当事者の不利益解消については可能な範囲で進めるべきことを一般質問でも言及しております。

しかしながら、私の不用意な発言の後、市民の皆様と意見交換する中で、一般の市民の皆様で同性愛関係の話に抵抗感がある、もしくは無関心な方々の多くは、「可能な範囲での性的マイノリティ支援自体」にも後ろ向きである場合が多いように感じました。
そのような立場の方々がその理由として挙げるのは、LGBは後天的な、いわば性的な趣味・趣向の問題であり、そのような「わがまま」に対してなぜ行政レベルでの支援が必要なのか、というものです。

しかし、このようなお考えの皆様でも、性同一性障害とその法制度の概要を知った方は、T(性同一性障害)については、先天的な障害であるから支援は必要だと言うのです。※ここでは「障害」という言葉の適否は置いておいてください。

ここから分かることは、先天的か後天的かで支援に対する態度が異なっているということです。実際にはTだけでなく、当然LGBも先天的なものですが、そのことに関する市民の理解がほとんど得られていないのではないかと感じました。※私も勉強するまでは理解していませんでした。

このような現状に対して、LGBT当事者や支援活動家の皆様は、LGBも先天的であることを当然の前提として、あまり強調されることなく、その先にある論点を啓発をされているように感じます。当事者や支援者にとってはあまりにも当たり前のこと過ぎて、あえて強調しないのかもしれませんが、私はそこのところが市民への理解が進まない大きな理由であり、啓発の最重要ポイントだと感じます。

まずはLGBも先天的であることをもっと強調して伝えるべきではないでしょうか?この理解の溝が埋まらない限り、一般市民への啓発は十分な効果が期待できないように思います。私も勉強会などの際には、この点について丁寧に伝える努力をしていますし、していきます。

また反面、必ずしも先天的ではない疑似的な同性愛の形態(機会的同性愛、性的嗜好など)が存在することも否定できません。この方々との線引きが必要なのか、必要としてどのように線引きするのか、この分野については十分な研究と結論が出ていないと感じますが如何でしょうか?

まだまだ研究、議論の深化が必要な分野です。このような基礎的な知識の上に、制度としての同性婚の賛否や家族の在り方に関する価値観の議論などが可能となってくるわけですから、焦らず、時間をかけて知識を深め、議論を深めて参りたいと思います。